2026/07/27
なぜ今、実家リノベが注目されているのか【実家リノベ学 第3講】
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同居の距離を、心地よく整えるために。
家族やパートナーとの関係が、
すっと軽くなる視点を届けます。
心地よい同居へのヒントを、そっと集めています。
実家リノベ学は、「実家を未来へつなぐための教科書」です。
第3講では、「なぜ今、実家リノベが注目されているのか」について、一級建築士として400棟以上の住まいづくりに携わり、23年以上親世帯との同居を経験してきた視点から解説します。
実家リノベ学について
このシリーズの目的や読み方は、
[【はじめに】実家リノベ学|実家を未来へつなぐための教科書]をご覧ください。
「実家リノベ」が注目されるようになったのは、ここ7~8年ほど前
私は住宅業界に携わって20年以上になりますが、「実家リノベ」という考え方が注目されるようになったのは、ここ7~8年ほど前からだと感じています。
もちろん、それ以前からリフォーム工事は数多く行われていました。
しかし、その目的は現在とは少し違っていました。
以前のリフォームは、
・古くなった設備を交換する
・傷んだ部分を修繕する
・建物の弱くなった部分を補強する
・耐震性を高める
というように、「古くなった建物を直すこと」や「建物の安全性を高めること」が中心でした。
特に、1981年、昭和56年以前の旧耐震基準で建てられた住宅については、耐震補強が大きな課題でした。
1981年に新耐震基準が導入された後も、木造住宅については2000年、平成12年に構造上の基準が一部強化、明確化されています。
2000年の基準では、地盤の状況に応じた基礎の選定、柱や筋かいなどの接合方法、耐力壁をバランスよく配置するための考え方などが、より具体的に示されました。
そのため、2000年以降に建てられた木造住宅には、それ以前の住宅と比べて、構造上の安全性がより高く確保されているものが多くあります。
そして現在、リフォームを検討する住宅の中には、こうした2000年以降に建てられた比較的新しい建物も増えてきました。
もちろん、建築年が新しいからといって、すべての建物がそのまま安全に使えるとは限りません。
劣化の状態や増改築の履歴、設計や施工の内容などを、一棟ごとに確認する必要があります。
それでも、柱や梁、基礎などの構造部分に十分な性能が残っていれば、それらを活かしながら、間取りや部屋の使い方を現在の家族に合わせて変えることができます。
つまり、リフォームに求められる役割が、
「弱くなった建物を補強すること」から、「安全性を備えた建物を活かし、暮らし方をより良くすること」へと広がってきたのです。
「建物の性能」だけでなく「暮らしの質」が求められる時代
最近、お客様からいただくご相談の内容も大きく変わりました。
以前であれば、
「キッチンを新しくしたい」
「耐震補強をしたい」
「古くなった水回りを交換したい」
という相談が中心でした。
現在では、
「余っている部屋をもっと有効に使いたい」
「家族が自然に集まれる場所をつくりたい」
「趣味や仕事を楽しめる住まいにしたい」
「親と程よい距離感で暮らしたい」
「自分たちらしい家に変えたい」
というように、住まい方そのものを見直したいというご相談が増えています。
以前であれば、「既存の住宅では、そこまで大きく暮らし方を変えることはできないだろう」と考えていた方も多かったと思います。
しかし、リノベーションの技術や考え方が広く知られるようになったことで、
「この壁を取り払うことはできないか」
「暗い部屋を明るい場所に変えられないか」
「使っていない部屋を家族の居場所にできないか」
といった、より自由な発想を持つ方が増えてきました。
建物の性能を上げることだけが目的ではありません。
今ある建物の力を活かしながら、自分たちにとってより便利で、より心地よく、より自分たちらしい暮らしをつくること。
暮らしの質を高めることが、リノベーションに求められる大きな価値になってきているのです。
実家には、まだ活かされていない価値が眠っている
私は、実家リノベーションを考えるうえで、「建物の価値を最大限に活かす」ということを大切にしています。
ここでいう価値とは、単純な不動産価格や建物の査定額だけではありません。
例えば、
・建物を支えている柱や梁
・長く使える基礎や構造部分
・水道や電気などの設備
・土地の広さや立地
・現在は使われていない部屋
・家族が長年暮らしてきた記憶
・地域や近隣とのつながり
こうしたものも、すべて実家が持つ価値です。
柱や梁、基礎などの構造部分は、適切に設計、施工され、必要な維持管理が行われていれば、20年、30年ではなく、さらに長く使える可能性があります。
水道や電気などの設備についても、状態を確認したうえで、利用できる部分を活かせることがあります。
一方で、間取りや部屋の使い方は、建てた当時の家族構成や生活様式に合わせて計画されています。
子どもが独立したり、親が高齢になったり、働き方が変わったりすれば、当時の間取りが現在の家族にとって最適とは限りません。
建物の構造や使える設備は活かしながら、間取りや部屋の役割を今の暮らしに合わせて変える。
そうすることで、これまで使われていなかった空間にも、新しい価値が生まれます。
ただし、何を残し、何を変え、どこを活かすべきかは、家族ごとに異なります。
建物の状態によっても違います。
広い部屋を家族の共有スペースにすることが価値になる家庭もあれば、それぞれが一人で落ち着ける場所をつくることが価値になる家庭もあります。
その家に眠っている価値を見つけ出し、家族にとって最も良い形で活用すること。
そこが、実家リノベーションの難しいところであり、同時に最も面白いところだと考えています。
実家に戻ることの意味も変わってきた
実家リノベが注目される背景には、「実家に戻る」という言葉の意味が変化したことも関係しています。
30~40年ほど前、家を建てる世代にあたる団塊世代には、地方から東京などの都市部へ移り住み、仕事や家庭を築いた方が多くいました。
その世代にとって「実家に戻る」とは、生まれ育った地方の故郷へ帰ることを意味する場合が多かったと思います。
実家へ戻れば、仕事も通勤も人間関係も、生活環境そのものが大きく変わります。
そのため、実家に戻って暮らすことは、誰にでも選べる現実的な選択肢ではありませんでした。
しかし、その次の世代以降は事情が変わっています。
現在、住宅購入や家づくりを考えている方の中には、東京やその近郊で生まれ育ち、現在も同じ地域で働いている方が多くいます。
新しく土地や住宅を購入するとしても、生まれ育った実家の近くや、同じ生活圏で探すことも少なくありません。
それならば、実家を活用し、親世帯と助け合いながら暮らすという選択肢も現実的です。
住み慣れた地域を離れる必要がなく、仕事や学校、友人関係を大きく変えずに生活できます。
さらに、親子が近くで暮らすことで、子育てや家事、親の見守りなど、お互いに協力できる場面も増えていきます。
実家に住むことが、故郷へ戻るという大きな決断ではなく、今までの生活を続けながら、家族との協力関係をつくる選択肢になってきたのです。
働き方の変化が、家族の助け合いを必要としている
家族の働き方も、30年前とは大きく変化しています。
以前は、男性が朝から夜遅くまで働き、女性が専業主婦として家事や子育てを担うという家庭も多くありました。
現在では、男性も女性も社会とつながり、仕事を続ける家庭が増えています。
子育ても家事も、男女にかかわらず、それぞれができることを分担する考え方が広がっています。
一方で、夫婦だけで仕事、家事、子育てのすべてを担うことは、簡単ではありません。
そのような中で、親世帯の協力を得やすい実家や実家の近くで暮らすことに、新しい価値を感じる方が増えています。
親世帯にとっても、子どもや孫が近くにいることは安心につながります。
子世帯にとっても、困ったときに助け合える人が近くにいることは、生活の大きな支えになります。
親子が近くで暮らすことは、一方の世帯がもう一方に依存することではありません。
それぞれができることを持ち寄り、無理のない範囲で助け合う暮らし方です。
こうした家族のあり方の変化も、実家リノベが注目されている理由の一つだと考えています。
「一緒に住む」という考え方も変わった
以前の同居には、「生活の多くを一緒にする」というイメージがありました。
同じ食卓で食事をし、同じキッチンや浴室を使い、家事も一緒に行う。
一緒に住むことは、家族の生活を一つにまとめることでもありました。
しかし現在の同居は、必ずしもすべての生活を共有することではありません。
親世帯と子世帯が、それぞれ自分たちの生活スタイルを守りながら一緒に暮らす。
食事をする時間も、休日の過ごし方も、家事の進め方も、それぞれ違っていて構いません。
親子であっても、お互いは別々の生活を持つ存在です。
それぞれの考え方や時間の使い方を尊重しながら、必要なときには支え合える。
そのような暮らし方が、これからの同居では大切になります。
親子の関係が近ければ近いほど、住まいの中では適度な距離も必要です。
いつでも顔を合わせられる安心感がありながら、一人で過ごせる場所もある。
一緒に食事を楽しめる場所がありながら、それぞれの世帯で食事を完結することもできる。
助けが必要なときにはすぐに行き来できる一方で、普段はお互いの暮らしに過度に干渉しない。
こうした暮らしを実現するためには、単に部屋数を増やすだけでは十分ではありません。
玄関、キッチン、浴室、洗面所、リビング、収納、生活動線などを、家族の関係性に合わせて考える必要があります。
私たちLakkeが大切にしている「家族の距離感をデザインする」という考え方は、ここから生まれています。
近すぎず、遠すぎず。
それぞれの暮らしを尊重しながら、安心して助け合える距離を住まいでつくること。
これが、これからの実家リノベーションに求められる大切な役割です。
実家リノベが注目されている本当の理由
実家リノベが注目されている理由として、建築費の高騰や空き家問題、相続、親の高齢化などが挙げられることがあります。
もちろん、こうした社会的な変化も大きな要因です。
しかし、より本質的な理由は、家族の暮らし方と、住まいに求める価値が変わったことにあると私は考えています。
古くなった部分を新しくするだけではなく、今ある建物の価値を最大限に引き出す。
家族構成や働き方の変化に合わせて、使われなくなった空間を新しい居場所に変える。
親世帯と子世帯が、それぞれの暮らしを尊重しながら支え合える住まいをつくる。
実家リノベーションは、単に古い住宅を改修する工事ではありません。
建物がこれまで積み重ねてきた価値を活かしながら、これからの家族に合った暮らしをつくる取り組みです。
まとめ
実家リノベが注目されているのは、古い家が増えたからだけではありません。
建物の性能が一定の水準まで高まり、今ある建物を長く活かせる可能性が増えたこと。
リノベーション技術の浸透によって、間取りや部屋の使い方を自由に見直せるようになったこと。
親子が同じ地域で暮らし、助け合いやすい生活環境が生まれていること。
共働き世帯が増え、家事や子育て、親の見守りを家族で支え合う必要性が高まっていること。
そして、同居が「すべてを一緒にする暮らし」から、「それぞれの生活を尊重しながら支え合う暮らし」へと変わってきたこと。
こうした変化が重なり、実家が持つ価値そのものが見直されるようになりました。
建物を新しくすることだけを目的にするのではなく、そこに暮らす家族が、これから先も心地よく支え合える環境をつくること。
実家に眠っている価値を見つけ出し、家族にとって最も良い形で未来へつないでいくこと。
それこそが、私たちLakkeが考える実家リノベーションです。
実家リノベ学は、「家を直す知識」ではなく、「家族を未来へつなぐ知識」を学ぶ教科書です。
次回、第4講では、実家リノベを考えるときに、家族で最初に話し合っておきたいことについて解説します。
📖 実家リノベ学とは
家族の歴史を未来へつなぐ住まいづくりをテーマに、一級建築士・金内浩之が建築・家族・相続・暮らしについて体系的にお伝えするLakkeオリジナルの連載です。
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