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ハンス・ウェグナー展「至高のクラフツマンシップ」ー織田コレクションー

お正月の渋谷ヒカリエで、静かな展示をみました

これだけのハンス・ウェグナーさんの椅子が並ぶ展示会は世界でも類を見ないようです。今回は東海大学名誉教授でもある椅子研究科の織田憲嗣氏のコレクションの展示に行ってきました。
織田先生の椅子への探究心は深く、ハンス・ウェグナーさんの様々な椅子のスケッチと図面をリスト化して、直接デンマークへ会いに行ったそうです。そこで得た信頼からコレクションが進み、今回の展示会へとつながったようです。

ハンス・ウェグナーは、まず“つくる人”だったそうです

展示を見ていて、特に印象に残ったのは、
ハンス・ウェグナーがデザイナーである前に、家具制作のマイスター=技術者だったという点です。

美しい椅子を生み出したデザイナー、というイメージが先に立ちますが、
実際にはまず「ちゃんと使える椅子」をつくる人でした。
ついつい見た目の美しさ、デザイン優先になってしまいがちですが、耐久性や製作過程などについてもしっかりと考慮した上で、考えていたそうです。

耐久性や座り心地、長時間使われること。
そうした前提を丁寧に積み上げた結果として、
あの洗練されたデザインが生まれている。

「美しいから使いやすい」のではなく、
使いやすさを突き詰めた結果、美しくなっている。
展示を通して、そんな順番を強く感じました。

つくる前に、つくって確かめるというやり方

建築士として特に心に残ったのが、制作プロセスの展示です。
ウェグナーは、いきなり完成形をつくるのではなく、
1/5サイズの模型を、本番と同じ作り方で製作し、検証を重ねていたそうです。

設計という仕事は、どうしても
「こう使われるはずだ」
「この寸法なら問題ないだろう」
という想像に頼らざるを得ない部分があります。

でも実際には、
人が触れ、体重をかけ、時間を重ねることで、
想像とは違う負荷やズレが生じてしまうことがあります。

だからこそ、先につくって確かめる。
ズレがあれば、デザインを修正する。
この姿勢は、自分の表現を守るためではなく、
使われ続けるものを守るための設計だと感じました。

私自身もリノベーションの現場において、実際の完成状態をイメージしながら職人さんと詳細を詰めることがありますが、もしかしたら同じことかもしれないと感じました。

実際に座ってみて、派手さは感じませんでした

展示では、実際に椅子に座ることもできました。
背もたれのフィット感や、肘掛けの当たりはとても自然で、
正直に言うと、強い「感動」があるわけではありません。

でも、少し時間が経つと気づきます。
背中や腰、腕のどこにも、無理な力が入っていないことに。
腰にあたる背もたれの具合や、肘を置いた時の姿勢が自然なのです。

建築でも、良い空間ほど意識されません。
暑さや寒さ、音や動線を気にすることなく、
ただただ自然に過ごせる。

ウェグナーの椅子も、まさにそんな存在でした。
見た目のデザインではなく、
いつまでも座っていたくなる設計。
だからこそ、実用的で長時間使っても疲れにくいのだと思います。

長く使うことを前提にしたデザインは、強いと思います

展示を通して、改めて強く感じたのは、
最初から「長く使われること」を前提にしている設計の強さでした。

椅子の脚や肘掛けのパーツは、
見た目がきれいなだけでなく、
力の流れが素直で、部材に無理をさせていません。
ウェグナーさんによる設計・制作過程について語る動画がありましたが、部材をつなぐダボ穴の位置や長さ、部材をつなぐ木組みの設計など、耐久性も十分考慮された設計であることを語っておられました。

建築でも同じで、
壊れにくい家は、ただ頑丈なのではなく、
無理な力がかからないように考えられている家です。
耐震設計や補強計画において、想定以上の力がかかることはあり得ます。その場合でも力の流れをスムーズに受け流すような構造計画にしておくことの大切さを改めて感じました。

どこが一番使われるか。
どこに負担が集中するか。
何年後に傷みやすいか。

それを想定することは、
ネガティブな発想ではなく、
長く使われることへの期待だと思っています。

家づくりも、たぶん順番が大事なんだと思います

家づくりでも、デザインはとても大切です。
でも設計者としては、その前に考えることがあります。

ちゃんと使われるか。
無理なく続くか。
暮らし方や家族構成が変わっても、受け止められるか。
その場限りの間取りになっていないか。

ハンス・ウェグナーさんの椅子へのこだわりを感じることで、
住まいづくりの考え方について改めて気付かされる機会になりました。

住宅リノベーションとは、
今をきれいにする仕事だけではなく、
将来の時間を含めて考える仕事。

展示を出て、今回のブログをまとめている時に、
そんな原点をあらためて思い出していました。

長く使われるものには、
必ず理由があります。

それは、見た目の美しさよりも先に、
使われ続けることを
ちゃんと考えているから。

家づくりも、きっと同じです。

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この記事を書いた人

金内 浩之

「マスオ建築士」同居歴は22年目に突入!
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住宅ローンアドバイザー
ファイナンシャルプランナー
相続診断士(一般社団法人 相続診断協会認定)
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